仕事や家庭で頑張る人から

・何がいけないのかよくわからないけど怒られてばかりで落ち込んで自己嫌悪している
・もっとストレス耐性を上げたい
・今のストレスフルな状況をうまく切り抜けたい
・もっと頑張れるようになりたい
・怒られても平気になりたい

このような相談を受けることがあります。

このような人は、これまですでに一生懸命に頑張ったり、理不尽に耐えたりしてきています。
それなのに「もっと頑張らなくちゃ」「もっと我慢しなければ」「もっと強くならなくちゃ」と自分を奮い立たせようとしていることが多いです。

「ストレス耐性を上げたい」ということもよく耳にします。

 

ストレス耐性=我慢力

だと思っている節があります。

それって、本当でしょうか?

 

先日、子どもが高校時代の部活動のママ友たちと久しぶりに集まって食事をした。
そのとき、自校・他校の部活動での“理不尽”とも“過度”とも言える指導について話が出て、いろんな意見を聞き、また私も自分の意見を言いました。

 

あなたにも、これまでを振り返ってみて欲しいのです。
あなたがこれまで我慢してきた“理不尽”や”過度な”叱責や暴言などは、本当にストレス耐性を育ててきたでしょうか?

 

今日は、私が思ったことも含めて、「ストレス耐性」について書いてみますね。

ストレス耐性=我慢?

現在でも、一部の職場(ブラック企業では特に)やスポーツ指導
家庭環境では、「耐えることがストレス耐性を鍛えること」として
理不尽な暴言・暴力、過度な叱責を
しつけとして当たり前だとか、育成に必要なことと考えたり、
「自分も経験してきたこと」だからと行っていますね。

日本では文化的に「我慢は美徳」「忍耐は強さ」の価値観や
「根性論」が信じられ評価されてきたことや
「厳しくするのは愛情」と捉える風潮が、このことの根強さの背景にあると思います。

しかし

理不尽な叱責や、過度なプレッシャーに耐えることは
心を鍛えて強くするどころか
ストレス反応が過剰になり、心をすり減らし、傷つけ
失敗や叱責への強い恐怖になったり
無力感や劣等感、自己否定を深めてしまうことが多いのではないかと思っています。

 

「怒られても平気になる」というのは
一見、「ストレス耐性」が高まったように見えますが
心を麻痺させ、諦めているのに近い状態です。

それは、「失敗を恐れてチャレンジできなくなる」
「不安障害」「抑うつ症」「不眠」になるなど
心身の不調や生きづらさになったり

叱責する人への怒りはもちろんのこと
「楽をする人」「頑張らない人」への反射的な激しい怒りになって
さらにストレスが貯まったり
人間関係でいさかいを繰り返すことになってしまいます。

 

本当のストレス耐性とは?

心理学では「ストレス耐性」を「レジリエンス(回復力)」とも言います。

単なる我慢強さではなく

・不必要なストレスやダメージを避けられる力
・ストレスやダメージを受けても柔軟に立ち直れる回復力

で、「自分を守り回復する力」や「挑戦を続ける力」になります。

つまり
ストレスやダメージを我慢して耐えることではなく
たとえ、ダメージを受けても、そこからしなやかに戻れる力です。

それこそが、本当の「ストレス耐性」じゃないでしょうか。

「耐える強さ」を求め続ける理由

今、私のところに相談に来る方たちが、「耐える強さ」を求めるのは
子どもの頃からの次のような理由があります。

・「我慢しなさい」「迷惑をかけないように」と親や周りから言われてきた
・困っても助けてもらえず「自分でなんとかするしかなかった」
・失敗や弱みを見せると怒られたり笑われたり、見放されてしまう家庭環境だった
・我慢したら褒められた

このような背景から「理不尽に耐える=大人の強さ」で、自分に必要なものだ
子ども心にすり込まれているのです。

でも、考えてみてくださいね。

今、あなたが
もっと「耐える強さ」が欲しいのはどうしてでしょう?
もっと「耐える強さ」を手に入れたとして、本当に楽や幸せになるでしょうか?

 

これまで、ずっと耐えて、頑張っているのに
「もっと我慢できるようになりたい」
「一人で頑張れるようになりたい」と望むのは
自分にさらにストレスをかけ続けるようなものです。

そして、我慢した分、うまくいかなかったならば
もっと自分も周りの人も責めてしまいます。

これでは、これから先のあなた自身やあなたの人間関係は
ずっと苦しくなってしまうのではないでしょうか。

 

本当のストレス耐性を育てるために

これからは、単に我慢強くなるのではなく
たとえ傷ついたとしても立ち直れる「しなやかな強さ」
適切に人を頼れるような「人とのつながり」を大切にしたいですね。

具体的には
・「これは不必要なストレスだ」と気づくこと
・自分の感情や感覚に意識を向けること
・自分を守るために「NO」と言えること
・心のオンとオフのバランスを取ること
・生活習慣や身の回りの環境などを整える
・信頼できる人と気持ちを分かち合うこと
・適切に周りの人に助けを求めること

このようなことが本当のストレス耐性を育てていきます。

 

あ!
その前に、忘れてはいけないことがありますよ。

それは
幼い頃に、当然、助けて欲しかった親に、助けてもらえなかった不安や
理不尽に傷つけられた痛みなど
心に残るトラウマや愛着の傷付きを癒やすことです。

自分の心を置き去りにしたまま、表面を整えたり、方法だけを試していると
いずれ、余計に不安や怒りが募り
無意識にさらに自分に「我慢」を強いることになってしまいます。

 

今のつらい現状を変えたい気持ちを大切にしながら
「我慢こそ強さ」
「もっと耐えなくちゃダメだ」
「一人で頑張らなくちゃ」という思い込みを手放すと、もっと楽に、安心して生きられるようになっていきます。

あなたも、これから「本当のストレス耐性」「しなやかな強さ」を身につけてみませんか?

 

では、また。

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