風呂キャン界隈の背景にあるもの

少し前
「風呂キャン界隈(風呂キャンセル界隈)」という言葉が
広まりましたね。

疲れてお風呂に入れない。
面倒で後回しにしてしまう。

そういう人たちや状態のことです。

そんな経験がある人も少なくないでしょう。

 

もちろん、一時的な疲れや忙しさが原因のこともあります。

しかし
●仕事や家事に手が付かない。
●身の回りのことがどうでもよくなる。
●自分自身をケアする気力がなくなる。

そんな状態が続いているなら
単なる「怠け」「面倒くさい」「意志の弱さ」ではなく
心からのSOSや、心のパターンかもしれません。

 

今回は、仕事や家事など何をするにもやる気が出ず、
自分自身のケアさえ難しくなってしまう
自分で自分を放棄しているような「セルフネグレクト」の心理についてお話しします。

セルフネグレクトの心理的な要因

①心のエネルギー切れを起こしている

セルフネグレクト状態の人には
いつも怠けているというよりも
逆に、長い間頑張り続けてきた人が少なくありません。

・人に迷惑をかけないように頑張る
・期待に応えようとする
・責任を背負い込む
・嫌なことも我慢する

そんな生活を続けていると
心のエネルギーは少しずつ消耗していきます。

本当は「疲れた」「休みたい」というサインが出ていたのに
それを無視して走り続けた結果
ある日突然、または、だんだんと動けなくなってしまうことがあります。

これは怠けではなく、心が限界を迎えている状態とも言えるでしょう。

②自分を大切にする感覚が育っていない

幼い頃から

・自分の気持ちより周囲を優先することを求められた
・頑張ることで認められた
・我慢することが当たり前だった
・いつも家が散らかっていたり、家族が揉めていたなど
心地よく居られなかった

という環境で育った人は
自分を労わることや、自分を心地よい環境に置くことが
苦手(無頓着)な場合があります。

・体調が悪くても無理をする
・疲れていても休めない
・困っていても助けを求められない
・整理整頓や片付けの仕方がわからない など

そうして自分を後回しにし続けた結果
自分自身をケアする感覚、そのものがわからなくなってしまうことがあります。

 

③無力感が強くなっている

人生の中で

「頑張っても報われなかった」
「わかってもらえなかった」
「何をしても状況が変わらなかった」

という経験が重なると、無力感が強くなることがあります。

 

すると

「どうせやっても無駄」
「何をしても変わらない」
「やってもいいことなんてない」

という感覚が生まれます。

 

掃除や片付け、身だしなみを整えることなどに
「意味がない」と感じるようになり
生活全体への意欲が失われてしまうことがあります。

④抑えてきた怒りや悲しみがある

長年抑え込んできた感情が隠れていることもあります。

・本当は傷ついていた。
・本当は悲しかった。
・本当は腹が立っていた。

けれど
その感情を感じることが許されなかったり
表現できなかったりすると
感情は、見えなくなっても心の奥には蓄積されていきます。

その貯まった怒りや悲しみは、外へ向かわず
自分自身へ向かうことがあります。

その結果

「どうでもいい」
「好きにすればいい」
「私はやらない」

という投げやりな状態、すねた状態になり
自分を大切にできなくなってしまうのです。

⑤「ちゃんとできないかも」と思うと手を付けられない完璧主義

意外かもしれませんが
セルフネグレクト状態の背景には、完璧主義が隠れていることもあります。

完璧主義の人は、

「ちゃんとやらなければ意味がない」
「中途半端ならやらない方がいい」
「やるべきことをやらなければいけない」

という考えを持ちやすい傾向があります。

 

そのため

●掃除をするなら徹底的にやらなければならない。
●仕事をするなら完璧に仕上げなければならない。
●ずべてきちんとできなければいけない。

と思い込んでしまいます。

 

すると

「ちゃんとできないかもしれない」
「うまくできなかったらどうしよう」

という不安が大きくなり
結果的に、何も手を付けられなくなることがあります。

 

周囲からは怠けているように見えても
本人の中では失敗への恐れや自己否定が強く働いていることが少なくありません。

⑥「ダメな自分」の確認行動になっている

少し厳しく聞こえるかもしれませんが
セルフネグレクト状態になっている人は
無意識に「ダメな自分」を確認している場合があります。

例えば、

・部屋が散らかっている。
・仕事が進まない。
・やるべきことができない。

そんなとき

「やっぱり私はダメだ」
「私はちゃんとできない人間だ」

という感覚を味わいます。

そうして「ダメな自分」を感じることで

「このままじゃいけない」と自分を奮い立たせようとしたり

誰かに助けてもらおうとしたり

自分が今どんな状態なのかを確認したり

していることがあります。

もちろん、本人は意識の上では
「ダメな自分」を望んでいるわけではありません。

むしろ苦しんでいます。

しかし、幼い頃から

「できるか、できないか」
「頑張っているか、頑張っていないか」

を判断基準にされて

・お前は何をやってもダメだな
・どうしてうまくやれないの?
・お母さんに任せておきなさい などと

周りから「ダメな人」と判断されてきた人は
「自分はダメな人間だ」という感覚に慣れ親しんでいることがあります。

このような人は、不思議なことですが
苦しいのに、無意識に「ダメな自分」を感じられる行動を
取ってしまうようになるのです。

言い換えれば

セルフネグレクト状態そのものが、
「ダメな自分」の存在や状態を確かめるためのサインになっているのです。

しかし
この方法では自己否定をエネルギー源にしているため
不安や焦りなどとても嫌な感覚になり、苦しくなってしまいます。

セルフネグレクトは心からのSOSかもしれない

ここまでご紹介した

・心のエネルギー切れ
・自分を大切にする感覚の不足
・無力感
・抑圧された怒りや悲しみ
・完璧主義
・「ダメな自分」確認

これらは一つだけではなく、いくつも重なっていることがあります。

 

そして
状態が深刻になっているなら、抑うつ状態になっている可能性もあります。

 

何週間も

・やる気が出ない
・眠れない、または寝過ぎる
・食欲が落ちる
・何も楽しめない
・自分を責め続けてしまう
・朝、起き上がれない

といった「これまでできていたことができない」状態が続く場合は、医療機関への相談も検討してくださいね。

自分を振り返るときかもしれません

セルフネグレクト状態になっている人の多くは
「頑張ってこなかった人」というより
むしろ、長い間頑張り過ぎてきた人であることが少なくありません。

 

だからこそ、今、必要なのは

「もっと頑張ること」
「うまくやること」

ではなく

「なぜここまで追い込まれたのか」

自分の心を見つめ直し、理解することです。

 

心のエネルギー切れや無力感、怒りや悲しみ
完璧主義などの背景を見つめていくことで
本来の自分らしさや生きる力を取り戻していくことができます。

 

「ダメだから変わる」のではなく、

「大切な自分だからケアする」
「大切な自分だから快適にする」

という感覚を育てていくことが大切です。

 

心理セラピーでは
表面的な「やる気の問題」としてではなく
その背景にある心のパターンや傷つきを丁寧に見ていきます。

 

もし今
「何もしたくない」
「自分のことがどうでもいい」と感じているなら
それはあなたの心からの”SOS”なのかもしれません。

心の問題は、気合いや根性、知識だけでは変わりません。

なぜ自分がセルフネグレクト状態になってしまうのか?

その背景にある心のパターンや傷つきを理解し
変えていくことで、生き方そのものが楽になっていきます。

一人で抱え込まず、必要なときは専門家のサポートも利用してくださいね。